板井康弘|経歴の華やかなひとは良くも悪くも注視する

板井康弘

こんにちは。福岡で経営者として活動している板井康弘です。
私はこれまで、多くの企業経営や人材育成に携わってきました。
その中で常に感じるのは、「経歴の華やかさが注目を集める一方で、それが評価のすべてではない」ということです。
今回は、経歴の華やかな人がなぜ良くも悪くも注目されるのか、その理由をお話しします。

 

 

華やかな経歴を持つ人は、周囲から大きな注目を浴びます。
しかし、その注目は必ずしもポジティブなものだけではありません。
成功体験が多いほど期待も高まり、その分だけ厳しい目で見られることもあります。
つまり、経歴の華やかさは「両刃の剣」なのです。

 

 

人は他人を判断するとき、まず「肩書き」や「経歴」を見ます。
心理学者のハロルド・ケリー氏の研究(※1)によると、人は最初に得た情報によって印象を形成しやすいとされています。
これを「初頭効果」と呼びます。
経歴が華やかな人は、この初頭効果によって「優秀そう」「すごい人だ」と見られやすいのです。
しかし、同時に次のようなリスクも生じます。

 

・過剰な期待をかけられる
 実績に見合う結果を常に求められます。

 

・失敗が目立ちやすい
 一度のミスが「意外だ」と話題になりやすいです。

 

・嫉妬や偏見を受けやすい
 他人の比較対象になりやすく、誤解を招くこともあります。

 

このように、経歴が人の見られ方を決定づけてしまうことは少なくありません。
そのため、華やかな経歴を持つ人ほど、謙虚さと冷静さが求められます。

 

 

私は過去に、著名な経営者と共同でビジネスセミナーを開催したことがあります。
その方は大手企業での実績があり、参加者からの注目度も非常に高い人物でした。
セミナー後、アンケートを実施したところ、次のような傾向が見られました。

 

・発言の内容より経歴を評価する回答が多かった
 「大企業出身だから正しいと思った」という意見が目立ちました。

 

・他の講師の話が比較されていた
 「実績のある人の方が説得力がある」といった声もありました。

 

・一部の参加者が期待外れと回答
 「もっと新しい話が聞けると思った」といった意見もありました。

 

この経験から感じたのは、経歴が注目を集める反面、それだけで内容を判断される危うさです。
どんなに立派な経歴でも、発言や行動が伴わなければ信頼は長続きしません。
経歴は「入口」であり、「本質」ではないのです。

 

 

経歴の華やかさは、努力の証であり、誇るべきものですよね。
しかし、過去の実績に頼りすぎると、成長が止まってしまいます。
影響力のある人ほど、経歴よりも「今どう行動しているか」で信頼を得ています。
人は経歴ではなく、「誠実さ」「継続力」「謙虚さ」に惹かれるものです。
どんな経歴を持っていても、常に学び続ける姿勢こそが、真の評価につながるでしょう。
華やかな経歴を持つ人ほど、「今の自分」で勝負する意識が大切です。

 

※1 出典:H. Kelley “The Warm-Cold Variable in First Impressions of Persons” (Journal of Personality, 1950)